あるひのことです。
くまモンは ともだちの 彦一くんと、
球磨川(くまがわ)でさかなをつっていました。
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くまモンは まったくつれませんでしたが、
彦一くんは さかなをどんどんつっていました。
彦一くん、すごいモン
つりは とくいだからね
彦一くんは じまんげにいいました。
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……と、ポポン!
なにかが、彦一くんの かたにあたりました。
彦一くん、だいじょうぶかモン!?
それは、あざやかな、だいだいいろの デコポンでした。
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いたたた……。ふん。こんなことするのは、どうせきつねだろう?
おーい、でてこい
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すると、しげみから きつねが1ぴき、ぴょんと とびだしてきました。
てには デコポンを もっています。
こんこん。やーい!彦一に、あたった、あたった!
そういって きつねは こんこんわらいます。
それは、彦一くんに いつもいたずらをしてくる、いじわるなきつねでした。
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ひとにものをぶつけちゃ だめだモン!
まあまあ、くまモン
彦一くんは、なぜか ニコニコしています。
くまモン、しらないの?
おいしいデコポンを からだにあてると、いいことがおきるっていうおまじないが、くまもとには あるんだよ
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彦一くんは、つれたばかりのさかなを、ぽんときつねにほうりました。
ほら、きつね。デコポンを あててくれたおれいに、さかなをあげるよ
えっ、いじわるしたのに、いいの?
こんこん、トクしたこん
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きつねは うれしそうに さかなをうけとって、こんこんとなきながら さってゆきました。
彦一くんは ものしりで、やさしいモン
と、かんしんするくまモンでしたが、
彦一くんは なにやら、まだニコニコとしていました。
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つりをおえて、くまモンがあるいていると……
きつねが みちのすみで、ないていました。
こんこん、こんこん……
さっきのきつねさん、どうしたのかモン?
きつねのはなしは、こうでした。
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彦一くんからさかなをもらったあと、
しらないひとに またデコポンをぶつけたら、
とてもとても おこられてしまい、
それがこわくてないていた、というのです。
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わたし、さっき、彦一からさかなをもらえたのがうれしかったんです。
それで、デコポンをあてるおまじないをすれば、きっとよろこばれて、なにかもらえるとおもったんです
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それはたいへんだったモン。
くまモンは、きつねのあたまを なでてあげました。
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と、くまモンは ハッとしました。
もしも彦一くんが、おなじように
だれかにデコポンをあてて、
おこられたら たいへんだモン
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そうですね、おいしいさかなをくれたのに……
くまモンときつねは、彦一くんをおいかけることにしました。
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おーい、彦一くん、ひとにデコポンをあてたら ダメだモーン!
こんこん、だめですよー!
ええっ、そんなことしないよ
彦一くんは おどろいたようにいいました。
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くまモンは、きつねがどんなめにあったのか、彦一くんに せつめいしました
うーん
彦一くんは、こまったように あたまをかきました。
ごめんごめん、ぼく、きつねをからかったんだ。
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いつもぼくに いたずらしてくるからさ……。
うそのおまじないをおしえて、だれかにデコポンをあてて、 おこられて、おちこめばいいとおもったんだよ。
そのとおりになっちゃったみたいだけど……
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きつねは、おこったようなかおをしました。
こんこん、ひどいです。さっきさかなをくれて、わたし、うれしかったんですよ
きつねがいつも ぼくにいたずらをするから、はらがたったんだよ
わたしは彦一と、ともだちになりたかっただけ だったんです
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じゃあ いたずらをしないで、はじめから そういえばいいじゃないか
ふん。きがつかない彦一がわるいんです
そんなこというなら、さっきあげたさかな、かえしてよ
もう たべちゃいましたよ
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ふたりのけんかをみて、くまモンは おもわずいいました。
ねえねえ、じゃあ、ボクにデコポンを あててみてだモン!
だからさくまモン、あれは うそのおまじないなんだよ?
いいから、いいからだモン
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彦一くんときつねは めをみあわせて、
そっと よわいちからで、
くまモンにデコポンをあてました。
さかなはあげられないけど、
ぼくからは これをあげるモン!
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ぎゅ! と、くまモンは ふたりをりょうてで
つつみこんでしまいました。
おこっていた彦一くんもきつねも おもわずわらってしまって、
さんにんは しばらくそのままでいたそうです。
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