「家でいいわよ。
そんなに贅沢しなくても」
やっぱりね。お母さんなら、そう言うと思った。久しぶりに訪ねてくる母を、都心のレストランに誘おうとしたけれど、家でごはんしようって。
母のために料理をつくるのは、どこか気恥ずかしくもあるものの、半日かけて、ゆっくり準備をした。
今ごろ母も、電車でゆっくりこちらへ向かっている頃だろう。
新幹線に乗れば、あっという間なのにね。
自分から贅沢をしない母のためにワインと大人のお菓子も用意してある。
たしかに、家も悪くないわね。
親孝行っていう贅沢を、今日はたっぷりさせてもらおう。