東京港醸造が造る甘酒や日本酒では、仕込み水として、なんと東京の水道水が使われているんです。
杜氏の寺澤善実さんいわく、東京の水道水は中軟水で、酒造りにはピッタリなのだそう。
お米も麹も東京産にこだわりながら、それでも手の届く価格で提供できているのも、
水道水ならではの“安さ”のおかげかもしれません。
今回は、東京都水道局に取材協力をいただき、水道水が美味しく飲めるワケを聞いてきました!
江戸から東京への改称から150周年。
水道局の皆さんに“東京水”の歴史について聞きました
2018年は、江戸から東京へと改称し、東京府が開設されてからちょうど150年。その節目を記念して、開催されたのが「東京150年祭」です。明治、大正、昭和、平成と、東京が駆け抜けてきた時の歩みを、都庁各局や自治体それぞれの視点から振り返りました。
私がお邪魔したのは水道局のブース。水道局の皆さんと、イメージキャラクターの「水滴くん」が出迎えてくれました。
東京都水道局は、もっと水道水を広く知ってもらうために“東京水”のデザインを一新。東京らしさ、安全・おいしさ、地産地消という3つのコンセプトをもとに、都民によって選ばれたのがこのデザインです。東京を代表する伝統工芸品の「江戸切子」をイメージした絵柄の中には、よ〜く見ると「水」の文字が隠れています。
「高度浄水処理って聞いたことありますか?」 東京の水道水がおいしくなった理由を教えてくれたのは、水道局 サービス推進部の中條嘉信さん。かつては、今ほどおいしいイメージの無かった水道水。その原因は、従来の浄水処理ではどうしても取り除けなかったわずかなニオイや有機物にありました。従来の浄水方法に加えて、現行の高度浄水では「オゾン」と「生物活性炭」の2つの処理工程が追加されたのだそう。
新たな技術では、オゾンが有機物をバラバラに分解して、それを活性炭が吸着することで、より安全でおいしい水が飲めるようになりました。1989年に高度浄水施設の整備に着手し、25年の年月をかけて、2014年にはついに利根川水系全域(都内)の高度浄水導入を達成!蛇口から水をそのまま飲めるなんて、世界的にすごいこと。東京の水道水がおいしくなった理由は、ここにあったんですね。
提供:東京都水道局
中條さんの話をうかがったあと、“東京水”をいただきました!
口の中で何度も味を確かめるように飲んでみましたが、普段飲んでいるミネラルウォーターとの違いは全く分かりません。 “水道水っぽさ”は、今や少しもありませんでした。
実際に、水道局が行った飲み比べ調査では、どちらが水道水・ミネラルウォーターか分からない状態で参加者に飲んでもらい、半数近くの人が「水道水の方がおいしい」と回答したのだそう。
日本最大級の水道専用ダムが、東京にあったなんて!
次に訪れたのは、奥多摩にある小河内ダム。都心から車で移動することおよそ2時間、奥多摩湖を囲む広大な自然に包まれます。ここは、東京都水道局が世界に誇る水道施設として「東京水道名所」に選定し、大切に管理されています。
日本最大級の水道専用ダムである小河内ダムは、東京都で使用される水量の、なんと40日分も貯めることができるのだそう。そして、安定した給水を支えるのは、その型式。小河内ダムは、コンクリートの重みで水圧に耐える仕組みの「重力式コンクリートダム」。60年以上経過した今も、想定される最大級の強さの地震に対しても安全が確認されているんです。重厚感に、飲み込まれてしまいそう…!
春は桜、秋は紅葉と、四季折々の景色が楽しめるのも小河内ダムの魅力。私が訪れたときも、カメラを抱えた方々とたくさんすれ違い、荘厳な風景を写真に収めていました。「水が生まれる」場所でもある水源林には、ニホンカモシカや野ウサギ、ツキノワグマなども生息しており、健康な森としての生態系がしっかり守られているそうです。
提供:東京都水道局 小河内貯水池管理事務所
ダムを歩いて心地よい風を感じた後は、そばにある「奥多摩 水と緑のふれあい館」へ。ここでは、奥多摩の自然やダムの仕組みを、子どもにとっても分かりやすく学ぶことができる施設です。
また、ここではリアルタイムで小河内ダムの情報が分かります。私が訪れた日の小河内ダムは、貯水率84%、貯水量1億5625万m3、放流量は毎秒4m3。規模が大きすぎて、もはやよく分かりません(笑)
レストランの人気メニューは「小河内ダムカレー」。なかなか忠実に再現されていて、ハッシュドポテトの展望塔に、たまごの管理船、ブロッコリーは針葉樹林。食べるときは、ダムを決壊させながらいただくので(笑)、少し「ごめんなさい」という気持ちになりながらも美味しくたいらげました。
うっすらと葉っぱが色付きはじめていましたが、その年の台風や朝冷えの気温によって、紅葉の仕方が変わってくるのだと教えてもらいました。桜の季節や新緑の湖も素敵そう。また来たいです!
山奥でのびのび育ったので、奥多摩の空気を吸ってふるさとを思い出しました。
当たり前のように生活の中にある水道水。どこからやってきて、どんな人たちが関わっているかを知ったら、東京の水道水に愛着がわくようになりました。