農家の人達がたっぷりと時間と愛情を込めて育てた柑橘たちが、たくさんの人達の元へ届く季節です。
連載第2回目は、そんな実りの季節を祝う柑橘の収穫祭「えひめみかん祭り」を取材。
生産者やお客さん、たくさんの人達の笑顔が溢れる会場の様子をお届けします。
愛媛中の柑橘が集う、県内屈指の「柑橘の祭典」を訪ねました。
バラエティー豊かな愛媛県産柑橘を展示販売する「えひめみかん祭り」が、今年も1月20、21日の2日間にわたって開催されました。
生産者とお客さんとの交流などを目的に開かれているこのお祭りも、今年で40回目。会場には伊予柑をはじめ、温州みかん、高級柑橘・紅まどんななど、約30もの品種がずらり! 来場したお客さんたちは、旬の伊予柑をはじめとする柑橘を手に取って爽やかな香りを確かめたり、試食しながらお気に入りの品種を購入したりと、思い思いの時間を楽しみます。
「えひめみかん祭り」の最大のお楽しみが、会場に並ぶ全ての品種を試食できること。30種類もの柑橘を一度に楽しめる機会、なかなかありませんよね! 会場はこの日も朝早くから家族連れや地元のおじいちゃんおばあちゃん、カップルなどのお客さんたちで大賑わい。試食を楽しみに毎年足を運んでいるお客さんも多いそうです。
「今年の伊予柑は紅が濃くてサイズも大きめ。果汁がギュッと濃縮されていておいしいよ〜」と、伊予柑色の半被を颯爽と着こなす生産者やJAの皆さん。早速むいてもらった伊予柑を口に含むと、プチプチっと果肉が弾け、中から甘酸っぱい果汁がじゅわっ。「なんてジューシー! これまで食べてきた伊予柑とぜんぜん違う!」そう興奮気味に話すと、「でしょう〜?」とにんまり。これが“旬の味”ってやつなのですね。
柑橘の展示販売のほか、子どもたちによる「みかん早むき大会」や紅まどんなやせとかなどが当たる「みかんガチャ」、みかんフレーバーのポップコーン販売、蛇口からみかんジュースが流れ出る(!)「ポンジュース蛇口」など、イベントも盛りだくさん!
「みかん早むき大会」に参加した4歳の男の子は、「知らない柑橘がたくさんあって楽しかった。伊予柑と紅まどんながおいしかったよ」とにっこり。「みかんガチャ」にチャレンジしていた2歳の女の子は、「これからいろんな味のみかんを食べるの」と笑顔で話してくれました。
松山市内から車で2時間ほど。
“柑橘の島”と称される、しまなみ海道にある大三島を訪ねて。
次にわたしたちが向かったのは、愛媛県・今治と広島県・尾道を結ぶ「しまなみ海道」。瀬戸内海に浮かぶ6つの島を繋ぐ、全長60kmほどの海土の道は、国内初の“海峡を横断するサイクリングロード”としても人気を集めています。その島のひとつ、大三島で無農薬の柑橘を栽培し、精油を生産している農家さんがいると聞き、足を運んでみました。
しまなみ海道の真ん中あたりに位置する大三島は、県内で最も大きな島。島内には、海の守り神「大山祇神社」をはじめ、美術館や博物館といったアートスポットが点在。カフェやコーヒー焙煎所といった気になるレストスポットもあり、1日かけてゆっくりと散策したくなります。
大三島の北東部に位置する場所に、2012年に関東からIターン移住をした松田康宏さん、英理子さんご夫妻が営む「シトラス&アロマ 島香房」があります。田舎暮らしと農業がしたいという長年の思いを叶えるべく、地域おこし協力隊の一員として大三島に移住した松田さんご夫妻。“柑橘の島”として知られる大三島で、柑橘を使って島の魅力を発信できないかと考えているときに、「柑橘の花が咲き始める5月頃に、みかん畑でかいだ花の香りに衝撃を受けたんです。なんてふくよかで優しい香りだろうって。この香りを商品化するにはどうしたら……と考え、たどり着いたのがオリジナルの精油造りでした」と英理子さん。以来、農家として“無農薬・無化学肥料・無除草剤”の自然農法で育てた島柑橘の販売をベースに、精油やフローラルウォーター(芳香蒸留水)などのオリジナルアイテムを生産しています。
オリジナルの精油は「島レモン」「島いよかん」「大三島ネーブル」、夏に採れる青い果皮を使った「青みかん」「グリーンレモン」など、種類も豊富。完全無農薬で作られた和精油はかなり珍しく、セラピストの間でも好評。現在は県内外のアロマサロンや病院、介護施設などでも使われているそうです。
工房からほど近くにある、収穫間近の伊予柑畑にもお邪魔しました。瀬戸内の太陽と潮風をたっぷりと浴びて育った伊予柑はずっしりと重みがあります。加工用に収穫した伊予柑は、果肉はジュースやジャムに、皮は精油やフローラルウォーターに使われるそう。「原材料の栽培から収穫、蒸留、パッケージングまで全て自分たちの手で行っているので、安心安全なものを提供できるのがうちの強みですね。少量多品目栽培なので、香りの種類も豊富。いろんな柑橘の種類から好きな香りを見つけてもらえるとうれしいですね」と康宏さん。「今後は石けんや化粧水といった柑橘を使ったコスメ作りにも力を入れていきたくて。柑橘を使ってできることがまだまだたくさんある気がするんです」話す英理子さんの朗らかな表情に、聞いているこちらまでパワーをもらっちゃいました。
昨年6月に工房をリニューアルし、新たに「島柑橘の蒸留体験講座」がスタート。柑橘の花や葉、実を自らの手で収穫して蒸留、フローラルウォーターの抽出ができるそう。農作業や精油生産の合間を縫って開催される体験講座はとても貴重なので、予約がすぐに埋まってしまうほどの人気です。
柑橘の収穫祭レポートか始まった今回の取材。「えひめみかん祭り」で大量の伊予柑を購入し、自宅へ発送!さらに大三島取材で無農薬伊予柑をおみやげにいただくという幸運にも恵まれました。帰宅後は家族や友人たちと伊予柑三昧! オレンジ色に輝く“愛媛の恵み”をたっぷりと堪能しました♪