毎年6月終わりから7月頭は、「佐藤錦」をはじめとする、さくらんぼの収穫時期。
農家の方が丹精をこめて作った一粒一粒が、たくさんの人の元に届く時です。
連載最後となる第3回目は、収穫祭りと収穫最盛期の生産農家、
そしてさくらんぼ味を作る加工工場を訪れました。
20万人以上が来場する、東北屈指の収穫祭「日本一さくらんぼ祭り」。
“山形県産のさくらんぼ”をPRする収穫祭「日本一さくらんぼ祭り」が、今年も6月17日と18日の2日間にわたって行なわれました。山形県山形市の中心部にある、文翔館(旧県庁)から七日町大通りの約1キロメートルが歩行者天国となり、神輿担ぎやダンスコンテスト、種飛ばし大会などイベントも目白押し。2日間合わせて約24万人が来場した、人気の収穫祭なのです。
来場者のお目当ては、もちろん収穫されたばかりのさくらんぼ。「おいしい山形のさくらんぼ すごだま振る舞い」には、採れたての冷えたさくらんぼが無料でもらえるとあって、家族連れを中心に朝早くから長蛇の列が。真っ赤で小さいな果実を前に、弟と2人分をもらいにきたという少女もご満悦の瞬間でした。
「日本一さくらんぼ祭り」の目玉は、日本一長い!と呼び声高い、「流しさくらんぼ」。竹を割って作った長さ約30メートルの水路をさくらんぼが流れ、それを箸でキャッチするという、なんとも斬新な催し。涼しげに、時に勢いよく流れるさくらんぼをすくうべく、多くの親子連れが奮闘していました。これがなかなか難しいんです……!
メインステージで行われていたのは、地元の高校生による、さくらんぼを使ったスイーツコンテスト。今年優勝したのは、山形西高等学校の、さくらんぼピューレにホワイトチョコレートがかかった、「一粒のシアワセ」と名付けられた洋菓子。後日、県内のパティスリーにて、実際にこのスイーツが限定販売されるそうです。
イベントには、ファミリーやダンスコンテスト出場者の少女たち、つや姫レディなど、多くのさくらんぼを愛する人に出会いました。昨年発売した、地元ポッキー「佐藤錦」をもって、ハイポーズ!晴天に恵まれた「日本一さくらんぼ祭り」は、笑顔にあふれていました。
会場内で出合った、山形県ご当地キャラのペロリン。山形
県の農産物のPR大使を務める、彼(彼女?)にも地元ポッ
キー「佐藤錦」を献上しました!
開花時期に訪れた生産農家を再訪問。収穫、箱詰め現場にお伺いしました。
第1回で訪れたさくらんぼ生産農家「フルーツサトー」さんに、「収穫時期にぜひもう一度さくらんぼの木を見せてもらいたい!」とのリクエストが叶い、改めて訪れました。真っ赤に熟し、最盛期真っ只中の「佐藤錦」の木々は、さくらんぼの朱赤と、濃い緑のコントラストに目を奪われます。
「ぜひ採って食べてみてくださいね」。
佐藤さんのうれしい一言で、贅沢な貸切(!)「佐藤錦」のさくらんぼ狩りをしばし堪能。「果実の裏側も赤くなっている実、木の根元ではなく、枝の先端の実がおいしいですよ」とアドバイスも。さくらんぼって、食べ出すと止まらない……!佐藤さんの農地では、一般の方にもさくらんぼ狩り用に解放している畑もあるそうで、「毎年常連の方も多くいらっしゃいます。1回のさくらんぼ狩りで、100粒以上食べられる方もいらっしゃいますよ(笑)」
「佐藤錦」をおいしく育てるためには適度な水分は欠かせないけれど、ある程度実がなった後に雨が実につくと、実が割れてしまうことも。そこで、ある時期からは雨よけテントが必須。
さらに、昼と夜の寒暖差も必要で、目安は気温18度。夜間に18度を下回らないと、実が赤くなりづらいそうで、今年は「悪くない気候だった」そう。繊細で、手間がかかる果実だからこそ、収穫時期は、喜びもひとしおなんだとか。
畑を後にし、箱詰め作業場へ。
そこには5人ほどのお母さんたちが、出荷作業の真っ最中。
畑から今朝収穫されたばかりの大量の「佐藤錦」を選定、箱詰めを行っていました。もう10年以上、毎年この時期になると出荷作業を手伝うというお母さんの手さばきは、見惚れてしまうほどのスピードと正確さ。
一粒一粒大きさ、色、形状を確認し、まずはランクを仕分け。その後、仕分けされた種類ごとに形よく箱詰めし、グラム数を図って、梱包へ。他の果実よりも小さい分、その手間は何倍も。「佐藤錦」が「食べるルビー」と呼ばれる所以が理解できたように思えます。
おいしいと言われるさくらんぼは、まず赤いこと。茎の部
分が少し凹んでハート型になっていること。実が張ってい
るかどうかは、表面に薄く縦と横のラインが入ってること。
さらに、茎が短くて太い方が甘さが強いそう。このマメ知
識、さくらんぼ狩りで使えそう!
お菓子、ゼリー、シャーベット……。
あまずっぱさが魅力の“さくらんぼ味”はこうやって作られます。
最後に、山形県内のさくらんぼを使って、ピューレや果汁を作っている、鈴木食品製造株式会社さんにお伺いし、加工現場を今回特別に見せてもらいました。
まずは、原材料貯蔵室。農家から運ばれてきたさくらんぼたちは一旦ここに集約され、冷蔵庫に入れて、加工日が決まるまで、しばし休憩を。
ちなみに届けられるさくらんぼは、生食用には出荷できない、形が少し悪いものですが、もちろん、そのままでもおいしく食べられるさくらんぼたちです(実際おいしかった……!)。
付着した土や埃などをとりのぞくために水洗浄に。その前後には、実に傷みがあるものなどをと取り除くため、人の目で選別を行います。ベルトコンベアーで運ばれ、加熱の工程へ。
加熱と同時に種と実が自動的に取れ除かれる機械に通された後は、スクリーン状の機械で裏ごしされ、ピューレ状に。3ミリ、0.8ミリ、0.5ミリ……と、果肉をこす穴を小さくすることで、どんどんなめらかなペーストに。この後、梱包して冷やされ、お菓子メーカーなどの最終食品加工工場へ納品されます。
今回工場を案内してくれた、鈴木食品製造株式会社の柴田剛社長(写真右中)と、製造部係長冨樫祐さん(写真左)、製造部次長菊地大成さん(写真右)。「『佐藤錦』はもちろん生食でも美味しいけれど、その生のおいしさを、長い期間、たくさんの人に知ってもらうための試行錯誤は続きます」という柴田社長。
小さな高級果実、「佐藤錦」。たくさんの人にたっぷりの愛情を注がれているからこそ、真っ赤にキラキラと光り輝いているんだな、と感じました。
「佐藤錦」収穫最盛期だった今回の取材。取材中にたくさんいただき、「日本一さくらんぼ祭り」でお土産として、買い込み、さらに、お世話になった生産農家「フルーツサトー」さんでも大量にお取り寄せまで(笑)。「佐藤錦」を言葉通り堪能できました!