休日は多くの観光客でにぎわう宇治の町。
平等院など歴史的な建造物も多く、昔から旅人が多く立ち寄る町でした。
地元の方は、いつでも笑顔で人々を出迎えてくれます。
今回はそんな宇治の人々、そして彼らがここの地で大切に守ってきたものをご紹介します。
修学旅行以来の宇治散策ですが、あのときとは違う目線で、町と人と触れ合えるのが楽しみです。
5月の緑が萌える茶摘みの時期、お抹茶体験をしました。
不器用な私にも、インストラクターの方が優しく指南してくれます。
お茶は80度を超えると、渋味が強くなってしまいます。
そのため、抹茶の粉を常温の水で溶かしてから、お湯を加えます。
茶筅を立てて粉を混ぜますが、なかなかうまくいきません。
思わず、お椀を支える左手に力が入ります。
抹茶が混ざったら、上の泡を茶筅で撫でて完成。
すると、表面の大きな泡がつぶれ、口当たりがクリーミーになります。
いただく前に、お椀の柄が口に当たらないように、右手で茶碗を回します。
茶菓子の甘さは、お抹茶の爽やかな苦味にぴったり。
しかし、飲み終わった後にがっくり。
茶碗の底に、だまになった抹茶が……。
まさかの失敗?
精進してリベンジしたい!
お抹茶体験で、スイーツ欲に火がつき、甘味探索へ。
商店街から平等院まで、多くの店が立ちならび、どこも大混雑の様子。
かやぶきの屋根の素敵なお茶屋さんを発見。
どうやら150年続く老舗のようです。お店番をしていたおばあちゃんが、優しく話しかけてくれました。
「後ろに生えている松の木も、130年くらい(の樹齢)なんじゃないかしら?(旦那の)おじいさんのときは、着物でお店に立っていたのよ」
ぷりっとした茶だんごに、食感が新鮮な抹茶寒天のあんみつ。
アイスがすこし凍った抹茶フロートもあります。
お孫さんの素敵な笑顔は、おばあちゃんにそっくり。
口に含んだら笑顔が溢れるような、
宇治に伝わるやさしい味。
ごちそうさまでした。
商店街を散策していると、裏通りに「抹茶豆乳ソフト」の文字を発見。
はにかみ顔で迎えてくれた、豆腐屋のご主人・松井さん。
店先には豆乳やおからのスイーツや惣菜が並んでいます。
お待ちかねのスイーツは、白い豆乳ソフトに抹茶の粉が、ふんだんにかかった贅沢品です。
豆乳のすっきりとした甘さに、抹茶の苦味もしっかりと効いた大人な味。食べすぎた後でも、ほおばってしまいます。
こちらのお店も、創業約100年の老舗店。松井さんのご家族は、毎朝5時から休むことなく、豆腐を作り続けてきました。
そんなあたたかい地元の味と、宇治の歴史ある味が合わさったとき、ここでしか食べられない唯一無二の味になります。
遠方からのお客さんが、ついつい足を運んでしまうのも頷けますね。
あまりにも美味しそうだったので、
豆乳ドーナッツも購入。
ダイエットは明日から。
店内には、古布や茶道具、ステンドグラス。
見入ってしまうコレクションは、全部おじいちゃんの拾い物だと、笑って話してくれたのは、創業者であるおじいちゃんの娘さん。
もともと藍染などの江戸古布のリサイクルから始まったお店。
次第に、友人の蔵のものを預かるなどして、骨董品屋に変化したようです。
「もう、おじいちゃんぼけちゃって……。でも死ぬまでお店に立つんだって聞かないのよ。だから私もお手伝いをしているの」
おじいさん手作りの前掛けも「これいいでしょ」と自慢したり、娘さんの表情や口調には、やさしさがにじみ出ています。
お店も、お二人も温かくて、ついつい長居をしてしまいました。
笑いが絶えないひと時を過ごすことができる場所です。
「これはうまい。
お茶の味がしっかりしてる」と
おじいさんの御墨つき!
の地元ポッキー
水の量も多く、流れが激しい宇治川。
昔、豊臣秀吉が堤防を建造するまで、町に水が流れ
込むこともありました。川にかかる、朱色の朝霧橋は初夏の緑に映えて綺麗。
散歩道では、青々とした葉が京都の日差しをやわらげてくれます。
茶器・朝日焼の窯元さん。400年の伝統を誇るその技術を、松林さんが丁寧に教えてくれました。
魅せられたのは、「鹿背(かせ)」という、鹿の背中の模様のような
陶器。内側の淡い青、外側の模様のはかなさに、目が奪われます。
「孫のために土を掘る」といわれる朝日焼は、100年以上前に掘ってねかせた、宇治の土から作られています。
松林さんの旦那さんが当代15代目。
長男の佑典さんが、日本の伝統技術を広めるプロジェクト「GO ON」に参加され、意欲的に朝日焼を世界に発信されています。
陶器を焼き上げる登窯は、手前から順に火をいれて窯を温めます。職人の情熱は、登窯の火ように、家族の絆と共に受け継がれ、ひとつの大火へと変わっていくのですね。
元バイヤーの血が騒いだとき。
カメラを忘れて
お話を伺ってしまいました。
小高い山をのぼると見える、一面の段々畑。そのほとんどに黒のシートがかかり、収穫祭がもうすぐであることを実感します。
茶畑に立つと、聞こえてくるのは鳥の鳴き声と風の音だけ。
ここは宇治駅から車で30分ほどの、宇治田原町。
町に茶畑がなじんでいて、「歩いていると茶畑に出会う」。そんな宇治ならではの距離感を味わうことができました。
次はいよいよ収穫祭。